インドは「発展途上国の命の薬局」

国境なき医師団(MSF)が世界規模キャンペーンを開始

インドは先進国の要請に屈しないで

国境なき医師団(MSF)は米国、日本、EU等がインドに対して強めている法改正・政策転換の要請に、同国のモディ首相が屈しないよう進言する世界規模のキャンペーンを開始しました。着目点となる法改正・転換が行われれば、インドが安価なジェネリック医薬品を生産する能力は大幅に限定され、世界中の何百万人もの人びとが必要としている薬が、価格高騰によって入手しにくくなることが懸念されるとのキャンペーンを展開しました。キャンペーンは、日本の京都で開催した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)貿易協定の第8回交渉会合からスタートしました。この貿易協定には、医薬品を安価に入手することを困難にする不利な条項案が含まれていました。

インドは「発展途上国の命の薬局」

国境なき医師団MSFは世界各地で約20万人のHIV陽性者に治療計画を供与していますが、そこで使ってる薬の80%以上はインド製のジェネリック薬といわれています。結核やマラリアやHIV/エイズの病気の治療に不可欠なジェネリック医薬品は、実はインドから仕入れているのです。また、先進国でも高価な非感染性疾患の治療薬も、インドでは低価格で生産しています。 国境なき医師団MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュードクターは「国境なき医師団MSFの活動は、インド製の適正価格の薬やワクチンに支えられています。病人にとって欠かすことができない薬が供給されなくなってしまう状況を、傍観するわけにはいきません。インドが『発展途上国の命の薬局』であり続けられるかどうか、世界中が注目していますが、国境なき医師団MSFからも強い支持表明をインドに伝えたいと思います」と述べています。 インドの法律は公衆衛生保護のため、特許の付与について諸外国よりも厳しい条件を設定しています。これがジェネリック薬の健全な市場競争を継続させ、その結果の1つとして、基礎的なHIV/エイズ薬の購入価格が10年で99%程下がり、1万米ドル(約1万2400円)から約100米ドル(約124円)となっているわけです。

先進国が要求する不当な要求

日本政府はRCEP交渉を通じて、国際貿易法で定められているインドの義務の領域を超える、幾つもの不当な条項の制定を目指していました。その一つが製薬業界ではよく知られる「エバーグリーニング」と呼ばれる手法でした。これが容認されると、製薬会社が既存の新薬を改善改良することで半永久的な市場の独占が可能になる怖れがありました。また別の条項案として、先発薬の臨床データの使用を禁止する「データ独占権」があり、これにより、薬がインド現行法のでは特許に値しない場合でも、製薬会社が長期に亘り、高い薬価を保持し、ジェネリック薬との販売競争を遅らせることができることになり、事実上の専売が可能となるという恐れがりました。EUおよび欧州自由貿易連合(EFTA)との交渉中の相互貿易協定にもインドの適正価格の薬の入手手段を阻む条項案が含まれていましたが、インド側の交渉団と市民団体の必死の反対を受け、ここ数年は進捗していない現状です。ただ、この交渉も間もなく再開されるといわれています。 アメリカ政府は自国の製薬業界のロビー活動に強く要請され、インドに特許付与の基準を緩和するよう迫るだけでなく、「特許リンケージ」という規制システムの施行も強く提唱しているといわれています。

企業利益が人命に優先されるべきでない

国境なき医師団MSFのキャンペーンの南アジア地域ディレクターを担当するリーナ・メンガニー氏は「インドの適正価格の薬によって命をつなぐ世界の何百万人もの人びとにとって、インドの薬が頼みの綱であり続けられるよう、国境なき医師団MSFはこの15年間キャンペーン活動をしてきました。多国籍製薬業界にインド製ジェネリック薬の市場参入が閉ざされ、その全てが失われることを強く懸念しています。同国のモディ首相は、多国籍製薬企業の不当な圧力に屈せずに、人命を企業利益と引き換えにしないで欲しい」と訴えました。 スイスに拠点を置く製薬会社のノバルティスは、インドでがん治療薬の特許申請を却下されたため、2006年にインド特許法の改定を求めて同国政府を告訴し、世界中がその動向を注視しました。そして2013年4月、インド最高裁の歴史的な判決により同社が敗訴したニュースは世界中を駆け巡りました。 これからもインドは「発展途上国の命の薬局」 であり続けられるのか、世界中が注目しているのです。

 

・ジェネリック 日本ジェネリック製薬協会

・ジェネリック 第一三共

・ジェネリック 沢井製薬